
「去年、定年になって、これから旅行に行くのが楽しみなのに、歯が抜けてしまって、このままだと入れ歯になってしまう。これから美味しい物をたくさん食べたいし、人生を満喫したいから入れ歯にはしたくない」
「これまでは子供にお金がかかって、自分は後回しだったけど、子供も自立したし、これまで放ったらかしにしていた自分の口をそろそろ大切にしようと思っている」
「入れ歯だと、味もわからないし、バネをかけている歯がグラグラしてくるし、もっと良い方法ないのかな?」
「まだ35歳なのに、奥歯が2本もなくて、入れ歯しかないと言われたけど、この年で入れ歯にするのは嫌だ!」
やはり、歯というのは失ってみて始めて、その大切さが分かるようで、このようにおっしゃる方が多いようです。
歯を失ってしまったときの治療法は次の5つです。
1.抜けたまま放っておく
2.両隣の歯を削って、ブリッジを入れる
3.部分入れ歯を入れる
4.歯の移植する
5.インプラントを入れる
これには経年的に色々な問題が考えられます。咬み合っている相手の歯が伸びてきたり、隣の歯が倒れてきたりします。それだけでなく、どうしても歯が無い部分では咬みにくいので歯がある場所で咬むようになります。そうすると、今度はその歯が悪くなってしまうということを繰り返すことが多いのです。
例えば、右の奥歯で咬めなくなったので左の奥歯ばかりで咬んでいると、その左の奥歯が悪くなってしまった。両方の奥歯で咬めなくなってしまったので前歯で咬んでいると今度は前歯も悪くなってしまった。このようにして徐々を失っていく方は少なくありません。咬む力は体重と同じ強さと言われています。咬む力で自分の歯を壊してしまうということが起きてしまいます。バランスよく咬めるということは今ある歯を失わないためにはとても大切なのです。

失ってしまった歯の両隣の歯を削って、かぶせ物をして、橋をかけます。橋をかけるために、ブリッジと呼ばれている治療法です。ブリッジは固定式になりますので、取り外したり、装置を洗ったりする手間はかかりません。また、しっかりと両隣の歯に固定されているために、モノを食べる際にも、違和感なく、美味しく食べることができます。 しかし、ブリッジには問題点がいくつかあります。両隣の歯で支えますので、この支えている歯に負担がかかります。
1本分を3本連続のブリッジで補うことはさほど問題はないのですが、2本分を5本連続のブリッジで補うことは支える歯に負担が大きすぎて長持ちしないと言われています。また、ブリッジは両隣の歯で支えますので、一番、奥の歯が抜けてしまうと支える歯がなくなってしまい、ブリッジをかけることができなくなってしまいます。
例えば、1本無くなってしまった歯を両隣の歯で支えるとすると、これまでは3本でやっていたことを2本でやることになります。会社で言えば、「これまで3人でやっていた仕事を1人辞めたから、2人でやってくれ」ということになります。最初のうちは頑張れるのですが、仕事量が多すぎると、数年経つと辞めてしまうでしょう。それと同じように、支えている歯には大きな負担がかかり、状態にもよりますが10年ぐらい経つと支えている歯がダメになってしまうのです。(オスロ大学の調査によると、ブリッジの平均残存期間は10.5年であった)。最後に、ブリッジの場合、支える歯の周囲を削ってかぶせものをするので、健康な歯を削らなければならないというデメリットがあります。
非常に安く、手軽に作ることができます。入れ歯の良い点は安く、手軽に、短期間に作ることができるということです。その反面、入れ歯にはいくつかデメリットがあります。
まず、入れ歯は人工の異物ですので、補う歯の本数が大きくなるほど、口の中に違和感が出てきます。入れ歯を支えるための床のような部分がありますので、食べ物の味や熱さを感じにくくなってしまいます。
また、部分入れ歯の場合、入れ歯を入れる両サイドの歯にバネをかけます。これをかけることにより、入れ歯を固定します。しかし、支えにされた方の歯に負担がかかります。咬む度に、上下左右に揺さぶられ、力を加えられ続けます。板に刺さった釘でも、長い時間をかけて上下左右に揺さぶられると、抜けてしまうのと同じように、バネをかけられてしまった歯は徐々に動揺しだし抜けてしまうことが多いのです。
バネをかけていた歯が抜けてしまうと、その分、部分入れ歯を大きくして、次の歯にバネをかけ、またバネをかけていた歯が抜けて、ということを繰り返し、徐々に総入れ歯に近づいてしまうということも多いのも事実です。現在、日本では8020運動といって、80歳のときに20本、歯を残そうという運動を厚生労働省が中心となって行っておりますが、残念ながら現実には80歳になった時に平均、6.8本しか残っていません。
入れ歯の場合、食事後に取り外して、手入れをしなくてはなりません。これが手間であるだけでなく、「他の人に見られると恥ずかしい」という方もいらっしゃいます。 自分の歯よりも咬む力が弱くなるため、固いものなどを食べることが難しくなってしまいます。

親知らずなど、役に立っていない余った健康な歯がある場合、その歯を移植歯として使用できます。自分の歯であるということはとても理想的です。適応が限られており、手術の難易度も高くなりますが、昔に比べ成功率は高くなっています。ただし、抜歯した部位と移植する部位というように手術部位が2箇所になるので、インプラントに比べて患者さんの負担は大きくなります。治癒期間もインプラントより長くなります。大人の場合は保険外治療になります。

インプラントのメリットはブリッジと入れ歯の欠点がないことです。インプラントというのは、人工のチタンでできたネジのようなものを歯の根っこの代わりとして顎の骨の中に埋め込み、その上にかぶせ物を装着するというものです。
天然の歯が顎の骨の中に植わって、顎の骨で支えられているのと同じように、インプラントも顎の骨によって支えられるために、バネをかけたり、橋をかけたりする必要がありません。したがって、入れ歯やブリッジのように支えとなる歯に負担をかけることがありませんので、他の歯が抜けやすくなってしまうなどの問題が発生しません。
さらに、インプラントは顎の骨の中に植わってますので、咬んだときの感触、咬み応えが自分の歯に限りなく近い感覚になるのです。

「大好きなたくわん!」

「おせんべいをバリバリ食べる!」

「大好物のステーキを咬みきって味わう!」
という、歯があるときには当たり前だったことが、再びできるようになります。美味しい物を自分の歯で好きなだけ、美味しく食べることがいかに素晴らしいことかを再認識される方が多いのです。